アキトの履歴書 31

2009.11.10

 
(駆け出し 8)
  
 いくらなんでも材料@(単価)の方がウチの売値よりも高いものを作り続ける事は、絶対出来ないので、
 
父に説明をし、その後は注文依頼の品が来る度に単価計算をし、赤字品の場合は受注辞退をさせて頂いた。
 
 それまでの赤字品については仕事を覚えただけが取り柄と思うことにした。
 
これ以後、新規品の導入の際は気を配り、計算してから仕事をすることを頭に入れたのだった。
 
 あの当時の下請け企業はこんな状況であった。利益を出すのは大変で、なぜこんな事になるかと言えば、
 
日発がウチへ加工品を発注する場合の@設定が単純計算、日発売価の5割、6割で行われていたからだ。
 
 例えば日発売価10円の品は、T社へは8円、ウチへは良くても6円、というように。
 
これでは材料代が高い品物は全くの赤になってしまうのも無理はない。
 
 逆にウチがT社の下請けで、数量のある品を6.4円(8円の8割計算)でやる方が良いに決まっている。
 
 しかし、これを6割5分計算にしてもらうのに、ここからまた何年もかかり苦労した。
 
 仕事を覚えると言っても私自身、悔しくて悔しくて、
 
日発の門の前でハタを振ってやろうかと思うほど辛い時代であった。
 
 父はなぜ物を言えないのか、当時は腹のうちが判らなかった。
 
兎にも角にも新しい仕事を取り込む時は、私が見習いに行き、必要な設備を導入して
 
立ち上げるという事がどれだけ困難であったか。
 
 それは私と家族の血と汗の結晶が設備に化けていく時代でもあった。
 
 

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